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ホワイトリング [中編]




外は想像以上に冷え込んでおり、

一度外に出た私は慌てて家に戻りダウンを着込んだ。

テラスでお茶しながら本でも読む予定だったが、

こんな寒空の下では凍えて読める筈もない。

なので、とりあえず体を温める為にも軽く散歩する事にした。

冷やかし気分のウィンドウショッピング。

洒落た店が立ち並ぶ中、

ウエディングドレスの展示されたお店に自然と目が留まり、次いで足が止まる。

純白のドレス。

美しい刺繍と手の込んだ様々な装飾。

胸元から爪先まで、氷の結晶を幾重にも丁寧に積み重ねたかのような流麗な出で立ち。

このドレスを纏った瞬間、女は世界で最も美しくなれる。

ホゥッと溜め息が出る様な見目麗しき姿は、それだけの説得力を醸し出すのだ。

今まで結婚願望というものは持った事が無かったが、
てつお
哲生となら...と思う。

自分がこのドレスを着てバージンロードを歩く姿を想像してみる。

(ガラじゃないな...)

長過ぎる裾を踏ん付けてすっ転んでしまいそうだ。

想像した瞬間に笑けてしまった。ふ

こんなガサツな女にウエディングドレスなど——と。

しかし、頭にこびりつくようなその映像は否定しきれない憧れ。

またしても浮かぶ『結婚』という文字。

自分がこんな事を考えてしまうのも全部哲生のせいだ。

(帰ったらラリアット喰らわしてやる...)

固くそう誓った。




早番の哲生と入れ替わるようにして遅番の私は仕事に入った。

この飲食店に働き始めてもう5年以上になる。

哲生と出会ったのもこのお店。

最初の頃はお互いに全く異性として意識して無かったけど、

同い年という事もあってか驚く程気が合った。

けれど性格や趣味趣向はてんでバラバラ。

ガサツな私に対して割と細やかな事に気が利く哲生

ネガティブ思考な私にポジティブ思考な哲生

よくこんな真逆の二人がくっついたものだ。

(いや、だからこそかもしれないな...)

磁石のS極とN極は惹かれ合うものなのだ。

そんな物思いに耽りながら辺りを見回してみると、

店内は家族連れやらカップルやらで程よく混んでおり、

今日もそれなりに忙しそうだった。

私は素早くスタッフルームに入ると、いつもの制服に着替えた。

いそいそとホールに顔を出して、交代する子らと軽く挨拶を交わす。

すれ違いざま哲生と目が合い、

私に向けて柔らかく微笑んだ哲生に同じ様に笑みを返した。

視線を交わすだけで互いに何を言いたいのか言葉にしなくても分かる。

”仕事頑張れよ”

”お疲れさま”

仕事場ではいつもこんな感じだった。

私達が付き合っている事をみんな知らない訳ではないが、

だからと言って職場でわざわざイチャついたりはしない。

というかそんなラブラブな時期はとうの昔に過ぎた。

少しだけ顔を引き締めて、心の中で『ヨシ!』と気合いを入れると、

エプロンの紐をギュッと強めに縛った。

今日もいつもの日常が流れていく。




20時を過ぎた頃、家族連れの子供達がやたらとはしゃぎ始めた。

何やら窓を叩いて嬉しそうだ。

気になった私は子供達と同じ様に外を眺めてみた。

「ゲェ......」

思わず下品な声が漏れる程、外はしんしんと雪が降っており、

辺り一面が雪で覆われていた。

(どうりで寒いと思ったよ......)

この歳になれば雪が降って喜ぶなんて事は無い。

いや、むしろ面倒臭い。

服や靴は汚れるし、転んで怪我して入院でもしたら大事だ。

「あっ!?そう言えば——傘持ってきて無いよぉ〜」

ガックリと肩を落とす私。

排気ガスをふんだんに含んだ都会の雪は決して綺麗とは言い難い。

特に降り始めは。

そんな雪に濡れながら帰れば服も汚れるし髪も痛んでしまう。

(あぁ...もう本当面倒臭い......)

仕事が終わる頃には止んでくれと祈りながら、私は仕事に戻った。




私の祈りも空しく、仕事が終わって外に出ると雪は更に大降りになっていた。

吹雪とまではいかないが大粒の粉雪が満開の桜の花びらの様に降っている。

「あぁ〜チクショウッ!」

漏れ出る声はやっぱり品がない。

一緒になって溢れた白い息が外気温の低さを物語っていた。

さて、どうやって帰ろうか。

(とりあえずフード被ってダッシュかな......)

けれど、あんまり急いで帰ると滑って転びそうだ。

そう思う位には雪は積もっている。

近くのコンビニで傘を買ってもいいのだが、家まで歩いて30分程度の距離。

たかが雪ごときに傘を買うのも勿体無いと思うのだ。

(やっぱ我慢して歩くしかないか......)

髪や服は汚れてしまうかもしれないがこの際仕方ない。

そう思って歩き出そうとした時だった。
   ゆか
由香!」

ふいに暗闇の方から声が掛けられた。

聞き慣れたその声は間違える筈も無く、

「......哲生?」

反射的にその名前を呼んで振り返る。

見れば哲生が右手に傘を差し、左手にもう一本の傘を持って歩いてくる。

「——はい」

そう言って持っていた傘を私に差し出した。

その手はちょっとだけ震えており、

もしかしたらこのクソ寒い中、私を待ってたのかもしれない。

「あ...りがと...」

驚きながらも素直に礼を言って受け取った。

「外見たらめっちゃ雪降ってるからさぁ。

多分由香テキトーだから天気予報とか全然見てないだろうなと思って」

(それでわざわざ持ってきてくれたのか...)

ズボラな私の性格を完璧に見抜かれてる。

私は嬉しさと照れ隠しの為、哲生の腕に肩パンした。

割とフルスイングで。

「痛って!?———んだよっ!嬉しいなら素直に嬉しいって言えよ!」

「うるさいっ——肩パンしたい気分だったんだよっ」

「どんな気分だよっ!」

暴力女め、と呟きながら哲生が先を歩き出す。

折角持ってきてくれて申し訳ないが今はこの傘を使う気分では無くなった。

私は歩き出した哲生に駆け足で近寄り、その腕に飛び付いた。

「うわっ!———何!?急に!?」

「別にぃ、寒いからサ。こっちのが暖かいっしょ」

「———だから...甘えたいなら甘えたいって素直に...」

「うっさい!寒いからっつってんでしょ!」

「へ〜へ〜...」

しんしんと雪が降る積もる中、

私達は久しぶりにバカップルの様に腕を組みながら帰った。




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